「医師の働き方改革」のこれから
今年3月、厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」が報告書をまとめ、2024年4月からは、原則的に「月100時間未満、年960時間以下」の時間外労働規制が医師に適用されることになりました。
「特例水準」の対象は
なお、2024年4月時点では、例外的な水準として、次の2つの基準も設けることになっています。
①地域医療を守るためにやむなく長時間労働とならざるを得ない場合を想定した「地域医療確保暫定特例水準」、②初期研修医や専攻医を対象とした「集中的技能向上水準」では、いずれも「月100時間未満、年1860時間以下」とされました。
これら“例外的な水準”の対象となる医療機関をどのように特定するかは、「医師の働き方改革に関する検討会」のあとを引き継ぐ形で今年7月5日よりはじまった「医師の働き方改革の推進に関する検討会」で話し合い、2020年の通常国会での医療法等の改正をめざす予定です。
◎厚生労働省「医師の働き方改革の推進に関する検討会」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05488.html
労働時間短縮のための取組みとは
報告書では、労働時間の短縮を強力に進めていくためには、次のようなことが必要と指摘しています。
- 医療機関のマネジメント改革
・管理者、医師の意識改革
・タスクシフティング、タスクシェアリング
・ICT等の技術を活用した効率化や勤務環境改善
- 地域医療提供体制の整備
・機能分化や連携
・プライマリケアの充実
・集約化、重点化の推進
・医師偏在対策の推進
- 上手な医療のかかり方の周知
厚労省の働き方改革に対する病院の反応は?
こうした方向性が示された一方で、病院からは「難しい」との声もあがっています。
日本病院会が行った調査では、厚労省が検討している医師の働き方改革を進めることで「労働環境が改善する」と回答した病院は5割程度にとどまり、3割の病院が「改善しない」との回答だったそうです。
「改善しない」と考える理由で多かったのは、「勤務医不足が解消されないから」(81%)、「労働基準法を遵守すれば必要な診療体制を維持できない」(66%)などでした。
また、日本医師会が救急医療機関や周産期母子医療センターを対象に今年3月に緊急で行った調査「働き方改革と救急医療に関する日本医師会緊急調査」では、「今後5年の間に、時間外勤務時間を月80時間(年換算960時間)以内にすることは可能か」との問いに対し、救急車受け入れ台数が1,000台以上の2次救急医療機関及び3次救急医療機関では、3割強の病院が「対応不可」「医師の半数程度が可能」「3分の1のみ可能」と回答しました。
「人から人」以外の方法も
長時間労働による過労死や心身の不調が社会問題となっていること、また、超高齢社会を迎えて医療需要が増加・変化していることを背景に、医療界でも働き方改革が喫緊の課題となっているわけですが、一方で、多くの病院が抱いている「人手不足が解消されなければ難しい」との思いも、おっしゃるとおりだと思います。
タスクシフティング、タスクシェアリングも必要ですが、人から人へのタスクシフトだけでは限界があるでしょう。
医師の働き方改革に関する検討会の報告書にもあったように、ICT等を活用した効率化や勤務環境改善も必須だと思います。
内閣府では、「戦略的イノベーション創造プログラム」の一環で、「AIホスピタルによる高度診断・治療システム」の研究開発を進めています。
すでに14件のプロジェクトが採択され、それぞれの病院や企業で実証実験等がスタートしています。
たとえば、「患者、スタッフに優しい病院になるための、AIを用いた診療時記録の自動入力化、インフォームドコンセント時の双方向コミュニケーションシステムの開発」を進める横須賀共済病院では、音声入力可能な電子カルテの実用化に向けてトライアルを進めているそうです。
実際に実用化されれば、大幅な省力化が可能になり、労働生産性が上がるはずです。
AIなどの最新のテクノロジーを活用していくことも、働き方改革には欠かせないでしょう。
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