がん患者の治療と仕事の両立支援に診療報酬

今年4月の診療報酬改定で、「療養・就労両立支援指導料」が新たに設けられました。
これは、がんの患者さんの治療と仕事の両立を推進するための診療報酬です。
主治医が、患者さんの同意を得て産業医に情報提供し、患者さんの就労状況を踏まえて指導を行ったり、産業医からの助言をふまえて治療計画を見直したり再検討したりしたときに算定することができます。

具体的な算定要件は次のとおりです。

◆「療養・就労両立支援指導料」 1000点(6か月に1回)
相談支援体制が整備されている保険医療機関の場合、500点加算(「相談体制充実加算」)

・対象疾患は、がん
・対象となる患者は、産業医が選任されている事業場で働いている労働者
・次の4つすべてを行った場合に算定
①医師が病状、治療計画、就労上必要な配慮などについて、産業医あてに文書で診療情報を提供
②医師または医師の指示を受けた看護師、社会福祉士が病状や治療による状態変化などに応じた
就労上の留意点について指導
③産業医から治療継続等のための助言の取得
④産業医による助言をふまえ、医師が治療計画を見直し・再検討

つまり、産業医と連携を取ることと、就労に関するアドバイスを行うことがポイントです。

産業医がいる職場の患者さんだけ?

がんの治療は、入院期間が短くなる一方、その後の治療(抗がん剤治療やホルモン療法など)は長くなり、通院の期間が長くなっています。
抗がん剤治療も、最初の一回だけ入院で行い、あとは外来で、あるいは初回から外来で、というケースが増えています。

その分、生活をしながら、働きながら治療を受けている人が増えています。
患者さんに話を聞くと、入院が短くなった分、患者さん同士で体験や知恵を共有する機会も減っているそうです。ある患者さんは、「病気になったあとの生活がイメージできないまま、社会に放り出されてしまう」と表現していました。

今回新設された「療養・就労両立支援指導料」で対象となるのは、産業医がいる会社で働いているがん患者さんです。ちなみに、産業医の選任が義務づけられているのは、常時50人以上の労働者(非常勤も含め)がいる事業場です。
ただ、もしかしたら、産業医がいない職場で働くがん患者さんのほうが、治療と仕事の両立の壁にぶつかりやすいかもしれません。

働く上での配慮や仕事を続けるための助言は、どんな職場で働く患者さんにとっても必要な情報です。ぜひ、相談支援センターや医療ソーシャルワーカー、あるいは患者会を紹介するなど、多職種・他部門と連携しながら、治療と仕事・生活の両立を支えていただきたいと思います。

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