医師の働き方改革に向けた対応状況を調査
2024年4月から、医師に対する時間外労働の上限規制の適用が開始されます。
これに向けて、「医師の働き方改革の施行に向けた準備状況調査」の第2回、3回の結果が公表されました。
医師の時間外労働規制の概要
改めて、2024年4月からの医師の時間外労働の上限規制をおさらいすると、原則、「年間960時間」に制限されます。これを超えた残業時間が発生した場合、使用者に対して罰則が発生する可能性があります。
ただ、都道府県の指定を受けた一部の医療機関は、「年間1860時間」までと緩和されています。これにあたるのが、次の3種類の医療機関です。
・B水準:3次救急病院や年間1000台以上の救急車を受け入れる二次救急病院など地域医療に欠かせない医療機関
・連携B水準:医師の派遣を通じて、地域の医療提供体制を支えている医療機関/自院のみでは年960時間以内/副業・兼業先での労働時間との通算での時間外労働の上限が年1860時間
・C水準:研修医など集中的に多くの症例を経験する必要のある医師
このうちB水準と連携B水準は「地域医療確保暫定特例水準」とされ、2035年度末を目標に解消する予定です。つまり、以降はC水準のみが残ります。
※厚生労働省資料「医師の働き方改革について」より
時間外労働の把握状況は100%
1860時間超は81大学病院中56病院
「第2回医師の働き方改革の施行に向けた準備状況調査」が行われたのは2022年7月~8月。大学病院の本院(81病院)と都道府県に対して、医師の時間外・休日労働時間の把握状況と、調査時点における時間外・休日労働(以下、時間外労働)が年通算1860時間を超える医師数を把握するために行われました。
まず時間外労働時間の把握状況については、自院の勤務実績、副業・兼業先の勤務予定については100%の大学病院(診療科単位)で把握できていました。
副業・兼業先で実際に勤務した時間まで把握できていたのは、93%(2455診療科中2280診療科)でした。
調査時点における副業・兼業先も含めた時間外労働時間数が年通算1860時間を超えていたのは、81の大学病院中56病院で1095人。
都道府県に対する調査(45都道府県が回答)では、993人(病院886人、有床診療所107人)、303医療機関(病院216/4257、有床診療所87/1427)でした。
医師の引き揚げによる支障も
第2回調査で、時間外労働時間が年通算1860時間を超える医師がいると回答した病院などを対象に、2022年8月~9月に行われたのが、第3回調査です。
労働時間短縮の取り組みを実施しても、2024年4月時点で副業・兼業先も含めた時間外労働時間数が年通算1860時間を超えることが見込まれる医師数は、大学病院の本院では8病院・69人。都道府県の調査では237人(病院204人、有床診療所33人)でした。
また、都道府県の調査で、医師の引き揚げによる診療機能への支障が見込まれると回答したところが、43医療機関ありました。
個別の伴走型支援も
今回の調査結果からは、2024年4月に向けて医師の労働時間の短縮が進められている状況が伺えます。
ただ、それでもまだ時間外労働がどうしても1860時間を超える医師を抱える医療機関があり、また、働き方改革の影響を受けて診療機能に支障が生じる可能性のある医療機関も出てきています。
厚労省はこうした医療機関に重点的に支援を行っていく考えで、「都道府県医療勤務環境改善支援センター」による個別の伴走型支援や、地域医療介護総合確保基金を活用した、医師確保に対する支援などを行っていく予定です。
◎参考
2022年11月28日 第93回社会保障審議会医療部会 資料
「働き方改革の実態調査について(第2、3回)」
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/001016977.pdf
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