精神障害の労災認定基準に「カスハラ」「感染リスク高い業務」追加へ

厚生労働省の「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」が報告書を取りまとめ、精神障害の労災認定基準に、カスタマーハラスメントや感染症リスクの高い業務を具体例として追加する考えを示しました。

 

心理的負荷の大きいカスタマーハラスメント事例とは?

 

精神障害が労災認定されるには、精神障害の発病前おおむね6か月の間に業務による強い心理的負荷があったと認められることなどが条件となります。その負荷の大きさを判断するための評価表(業務による心理的負荷評価表)が見直されました。

この評価表には心理的負荷にあたる具体例が紹介されています。今回追加された一つが、「顧客や取引先、施設利用者から著しい迷惑行為を受けた」という、いわゆるカスタマーハラスメントに関する事例です。これに関連する具体例が、心理的負荷の大きさ(強・中・弱)ごとに紹介されました。

その「強」にあたる、特に心理的負荷が大きい事例として紹介されたのは、「顧客等から、治療を要する程度の暴行等を受けた」「顧客等から、暴行等を反復・継続するなどして執拗に受けた」「顧客等から、人格や人間性を否定するような言動を反復・継続するなどして執拗に受けた」などです。

 

感染リスクの高い業務も心理的負荷大の事例に

 

もう一つ追加された事例が、「感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した」です。特に、次のような事例では心理的負荷が大きいと指摘されました。

 

「新興感染症の感染の危険性が高い業務等に急遽従事することになり、防護対策も試行錯誤しながら実施する中で、施設内における感染等の被害拡大も生じ、死の恐怖等を感じつつ業務を継続した」

 

こうした見直しにより、より適切な認定、審査の迅速化、請求の容易化を図る、とされています。

 

精神障害の労災認定は増えています

 

業務による心理的負荷を原因とする精神障害については、2011年に策定された認定基準をもとに判断が行われています。精神障害の労災保険給付請求件数は年々増加していて、2022年度には2,683件に上りました。支給決定件数も増加傾向にあり、2022年度は710件です。

10年前の2012年度と比べると、請求件数は2倍以上に、支給決定件数も約1.5倍に増えています。

「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」報告書より

 

 

また、全国健康保険協会の現金給付受給者調査報告によると、健康保険の傷病手当金の受給原因となった傷病のうち、最も多いのが「精神及び行動の障害」で、全体の3割強を占めています。

 

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◎参考

厚生労働省「『精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会』の報告書を公表します」

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33933.html

 

全国健康保険協会「現金給付受給者状況調査報告」

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat740/sb7200/sbb7206/

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