賃金改善を評価する「ベースアップ評価料」を新設

2024年度の診療報酬改定で「重点課題」として掲げられたのが、「現在の雇用情勢も踏まえた人材確保・働き方改革等の推進」です。その具体的な方策として、職員の賃上げを実施するための新たな評価「外来・在宅ベースアップ評価料」が設けられることになりました。

 

医療界の人材不足はデータにも如実に

 

産業界では春闘などを通して賃上げが行われていますが、「基本方針」でも指摘されているとおり、医療分野では賃上げが他の産業に追いついていない状況があります。

人材不足は多くの医療機関が悩まれていることだと思いますが、統計データにも如実に表れています。入職率から離職率を引いた「入職超過率」は、2022年には0%に落ち込みました。また、医療・介護分野の有効求人倍率は、全職種平均の2~3倍の水準が続いています。つまり、売り手市場なのです。

※表をクリックすると拡大表示されます。

※表をクリックすると拡大表示されます。

※いずれも「中央社会保険医療協議会 総会(第577回)」資料より

 

「ベースアップ評価料」とは

 

こうした背景を受け、人材を確保するために、確実に賃上げを行っていくための評価として新設されたのが、「ベースアップ評価料」です。下記のように、それぞれの分野において、医師以外の職員の賃金の改善を実施している場合の評価として新たに設けられました。

 

●外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)(Ⅱ)

●歯科外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)(Ⅱ)

●入院ベースアップ評価料

●訪問看護ベースアップ評価料

 

「外来・在宅ベースアップ評価料」とは

 

このうち、外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)は、外来医療または在宅医療を実施している医療機関において勤務する看護職員、薬剤師、その他医療関係職種の賃金の改善を実施している場合の評価です。

 

「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)」(1日につき)

1 初診時 6点

2 再診時等 2点

3 訪問診療時

イ 同一建物居住者等以外の場合 28 点

ロ イ以外の場合 7点

 

ベースアップ評価料のポイント①対象は医師以外の職種

 

対象となる職員は、医師・歯科医師以外の職種。具体的には、薬剤師/保健師/助産師/看護師/准看護師/看護補助者/理学療法士/作業療法士/視能訓練士/言語聴覚士/義肢装具士/歯科衛生士/歯科技工士/歯科業務補助者/診療放射線技師/診療エックス線技師/臨床検査技師/衛生検査技師/臨床工学技士/管理栄養士/栄養士/精神保健福祉士/社会福祉士/介護福祉士/保育士/救急救命士/あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師/柔道整復師/公認心理師/診療情報管理士/医師事務作業補助者/その他医療に従事する職員(医師及び歯科医師を除く。)です。

 

ベースアップ評価料のポイント②定期昇給ではなくベアによる改善

 

対象職員の賃金の改善は、「定期昇給によるものを除く」となっています。つまり、ベースアップ評価料という名前のとおり、ベースアップ(ベア)が必要です。

ここで、定期昇給とベースアップの違いを簡単に説明すると、まずベースアップは賃金表の改定等により賃金水準を引き上げること。賃金表に記載された額そのものを引き上げることです。一方、定期昇給は、賃金表内で職員の賃金を上方へと移動させることです。

今回のベースアップ評価料は、賃金表そのものの改定を伴うベースアップが求められています。

 

ただし、基本給だけではなく、基準内手当の引き上げもベースアップに当たります。ベースアップ評価料の施設基準では「基本給又は決まって毎月支払われる手当の引上げにより改善を図ること」が原則とされています。つまり、基本給を上げるのか、基準内手当を上げるのか、両方を上げるのかはそれぞれの医療機関の判断次第です。

 

ベースアップ評価料のポイント③計画書、報告書の提出が必要

 

ベースアップ評価料を算定するには、施設基準の届出が必要です。その際、賃金引き上げに関する計画書と報告書を地方厚生局に提出する必要があります。

そのなかで、ベースアップ評価料が原則ベースアップに充てられているかを確認されるほか、「自主財源等も含めた全体的な引き上げ状況及びベースアップ評価料の対象とならない40歳未満の勤務医師等(改定率+0.28%分)の職種の状況についてもお聞きする予定」とのことです。

 

「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)」とは?

 

外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)は、同評価料(Ⅰ)の届出を行っている無床診療所が、同評価料(Ⅰ)では対象職種の賃金について1.2%の引き上げができない場合に算定できるものです。

具体的には、「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)及び歯科外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)により算定される点数の見込みの 10 倍の数が、対象職員の給与総額の1分2厘未満であること」が施設基準となっています。

 

 

◎参考

厚労省「個別改定項目について(令和6年2月14日)」

https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001210979.pdf

 

厚労省「令和6年診療報酬改定と賃上げについて~今考えていただきたいこと(病院・医科診療所の場合)~」

https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001211794.pdf

会員登録のメリット
必要事項が登録されているので求人応募が簡単。
優先的に非公開求人や厳選求人をご紹介します。
会員のみに開示している情報もweb上で閲覧可能です。

業務提携企業