『開業医の正体――患者、看護師、お金のすべて』が人気だそうです
『開業医の正体 患者、看護師、お金のすべて』という本がベストセラーになっています。今年2月に発売され、即重版がかかったそう。著者は、小児外科医の松永正訓先生です。
医療関係者向けではなく、一般向けの新書ですが、同業者である先生方が読んでも、「あー、あるある」と共感されるところもあれば、クリニックの赤裸々な経営状況に「へぇ!」と驚かれたり、大学局員と勤務医と開業医の違いに「なるほど」と納得されたり、痛快で、読みごたえがあると思います。
自己資金なしで開業⁉
著者の松永先生は、19年間、大学病院(千葉大)の医局に在籍して、44歳のときに開業しようと決めたそうです。といっても、そのときの貯金は200万円ほど。しかも、開業を目指していたわけではなく、「大学病院に残ることができればそうしたかった」けれども、「体が弱く、それは無理だった」から開業することにした、とのこと。
自己資金なしで開業できるの……と思う方は多いでしょう。
どうやって開業したのかといえば、土地を所有しているオーナーにクリニックを建ててもらい、その代わり、オーナーに家賃を支払い続ける「建て貸し」という方法で、初期費用を抑えたそうです。
ただ、そうは言っても新規開業ですから、内装工事、医療機器、備品、運転資金……と、それなりにお金がかかります。自己資金ゼロだった松永先生は、リース会社から「借入金5000万円、リース代1200万円を借りた」とのこと。第1部の「クリニックはどうやって作られているか?」では、そんな開業に伴うお金や人の話が赤裸々に綴られていました。
大学病院、一般病院、開業医の違い
転職に興味を持っていらっしゃる先生方にとっては、第3部の「医者の作り方、教えます」も興味深いと思います。医師になるまでの話はさておき、松永先生は、医師を開業医と勤務医に分けて語るのは「正しくない」といいます。そうではなく、「『開業医』と『大学病院の医師』と『一般病院の医師』の三つである」と。
そして、それぞれの仕事の違い、楽しみを紹介しています。大学病院時代にいちばん楽しかったことは「研究と学会活動」、一般病院の勤務医は「なんと言っても臨床に専念し経験を積み上げること」、開業医は「自由を手にしたことと、自分の時間を持つことができたこと」とのこと。
では、生まれ変わってもう一度人生をやり直すならどれを選ぶかというと、迷わず「大学病院がいい」そうです。その理由は、ぜひ本を読んでいただければと思います。それぞれの仕事の楽しさについても、印象的なエピソードとともに紹介されています。
行列のできるクリニックの医業収益
この本が多くの人に読まれたのは、“クリニックの先生”がふだんどんなことを考えて診察をしているのか、どんな人が医師になるのかなど、一般の人にとっても気になるからでしょうか。「開業医ってやっぱり儲かるの」という関心も大いにあるのだと思います。
本のなかには「ぼくのクリニックの収益は?」という見出しもあり、「これまで最も患者が多かった年は、1万8470人の来院」があり、今は少し落ち着いて1万6000人くらいであることのほか、具体的なある月の医業収益の金額も「こっそり紹介」されています(「こっそり」と書かれているので、ここではあえて触れません)。
そんなふうにクリニックの舞台裏が包み隠さず綴られているだけではなく、読み進めると、ユーモアのある文章の端々から、小児外科医としての信念や、「医師としてこうありたい」という思いも伝わってきます。そういう先生だからこそ行列のできるクリニックになるのだなと納得した一冊でした。
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