コロナ禍で医療者の健康状態、精神的負担が悪化――2021年版「労働経済白書」
医療業界、介護・福祉業界では、「寝つきが悪くなった」「食欲がない」など健康状態が悪化した人が他の業界に比べて多い――。
このことは、厚生労働省がこのほど公表した令和3年(2021年)版「労働経済の分析」(労働経済白書)によって明らかになりました。
特に精神的負担が増えている
このコロナ禍で働く人の肉体的負担、精神的負担はどのように変わっているのでしょうか。
「労働経済の分析」(労働経済白書)では、「2020年4~5月」「9~10月」「2021年1月」の3つのタイミングについて平時と比べた肉体的負担、精神的負担の状況を調べています。
その結果、「医療業」「社会保険・社会福祉・介護事業」では次のような特徴が見えてきました。
- 肉体的負担も精神的負担も、平時から他の業種に比べて高い水準にある
- 肉体的負担は、2020年4~5月に上昇、その後、2021年1月にさらに上昇
- 精神的負担は、2020年4~5月に上昇、9~10月に一旦低下したものの、2021年1月に上昇
- 正社員、非正社員ともに女性のほうが、負担が大きいと感じている
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医療・介護では4人に1人が体調悪化
また、コロナ禍で働くなか、自覚的な健康状態が悪化している様子もうかがえます。
「寝つきが悪くなった、睡眠の質が低下した」
「食欲がない、ゆううつだなど、精神的な疲労の症状がある日が増えた」
「体調が優れない日が増えた」
「頭痛、腰痛など身体的な疲労の症状がある日が増えた」
「ひどく疲れている日が増えた」
これら5つの質問について「当てはまらない(1点)」から「非常に当てはまる(5点)」まで5段階評価で回答してもらい、その合計点で健康状態の悪化の状況を業種間で比較しました。その結果、14点以上とスコアの高い人(つまりは当てはまる項目の多い人)の割合が最も高かったのが「社会保険・社会福祉・介護事業」で26%。次が「医療業」で25%でした。
精神的負担増が仕事のモチベーションを下げている
さらに、「労働経済の分析」(労働経済白書)では、どんな要因が仕事の満足度に影響を与えたのかという分析も行っています。
これを見ると、「肉体的負担の軽減」「精神的負担の軽減」「利用者・取引先等からの感謝」「使命感の増大」がプラスに働いたと回答する人も一定数いる一方で、それ以上に多かったのは、「精神的負担の増大」がマイナスに働いたという声でした。
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「労働経済白書」とは
「労働経済白書」は、一般経済や雇用、労働時間などの現状や課題について分析した報告書で、基本的には年1回公表されています。ただ、昨年(2020年)は新型コロナウイルス感染症が労働経済に大きな影響を与えたことを踏まえ、見送られていました。
今回の結果からは、医療、介護・福祉業界で働く人の負担(特に精神的負担)が増えていて、体調悪化を感じている人も少なくないこと、職員満足度を高めるには精神的な負担を軽減してあげることが重要であることがうかがえました。
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