救急病院での「医師の働き方改革」に新たな評価
4月の診療報酬改定に向けて、現在、議論が進められています。
1月29日に開催された中医協(中央社会保険医療協議会)総会では、個別改定項目が公表されました。
個別改定項目には4つの柱があり、その1番目に掲げられたのが、「医療従事者の負担軽減、医師等の働き方改革の推進」です。昨年末に公表された「令和2年度診療報酬改定の基本方針」で、「重点課題」とされたのが、この項目でした。
改定率はマイナス0.46%、働き方改革に0.08%分を
個別改定項目について説明する前に、まずは全体の話から。
2020年度の診療報酬改定の改定率は、全体で0.46%の引き下げとなることが決まっています。2016年度、2018年度に続いて、3回連続のマイナス改定です。
その内訳は、診療報酬本体がプラス0.55%、薬価がマイナス0.99%、材料価格がマイナス0.02%。
注目すべきは、「勤務医の働き方改革への対応」に「0.08%(公費126億円程度)」を充てると定められたこと。このように使途が限定されたのは、異例のことです。
救急搬送2千件以上が条件
具体的な改定項目を見ると、目玉のひとつが、
「地域の救急医療体制における重要な機能を担う医療機関に対する評価」
が新設されること。
「地域医療体制確保加算」という名目で、救急医療を提供し、病院勤務医の負担軽減と処遇改定に対する体制などを整えている病院において、入院初日に算定するものです。
救急医療の実績としては、救急車または救急医療用ヘリコプターによる搬送件数が年間2,000件以上あることが条件です。
一方、病院勤務医の負担軽減・処遇改善に対する体制としては、次のようなことが条件になります。
- 勤務医の勤務状況の把握とその改善の必要性等について提言するための責任者を配置
- 勤務医の勤務時間と当直を含めた夜間の勤務状況を把握
- 多職種からなる、役割分担推進のための委員会または会議を設置し、「病院勤務医の負担軽減及び処遇の改善に資する計画」を作成。当該委員会等は、同計画の達成状況の評価を行う際、そのほか適宜必要に応じて開催する
- 上記の「計画」は、現状の勤務状況等を把握し、問題点を抽出した上で、具体的な取り組み内容と目標達成年次等を含めた病院勤務医の負担軽減・処遇の改善に資する計画とするとともに、定期的に評価し、見直しを行う
- 上記の「計画」は、次の項目を検討したうえで、必要な事項を記載すること
・医師と医療関係職種、医療関係職種と事務職員等の役割分担の具体的内容
・勤務計画上、連続当直を行わない勤務体制の実施
・前日の就業時刻と翌日の始業時刻の間の一定時間の休息の確保(勤務間インターバル)
・予定手術前日の当直や夜勤に対する配慮
・当直翌日の業務内容に対する配慮
・交替勤務制、複数主治医制の実施
・育児・介護休業法第23条第1項、3項または第24条の規定による措置を活用した短時間正規雇用医師の活用
- こうした取り組み事項を院内に掲示するなどの方法で公開すること
このように、救急搬送件数が多く、勤務医の働き方改革に向けて具体的な取り組みを行っていることを条件にした加算が新設されます。
人員体制に影響する項目が目白押し
そのほか、働き方改革関連では、改定項目が目白押しです。
たとえば、「救急搬送看護体制加算」に救急外来への搬送件数と看護師の配置実績に応じて新たな評価区分を設け、評価を拡充すること、医師等の常勤配置にかかる要件と専従要件の見直し、「病棟薬剤業務実施加算」の評価と対象病棟の見直し、「夜間看護体制加算」の要件の見直し――など、人員体制に関する見直しが多数行われます。
院内の人員体制に直接影響を与えるものなので、4月に向けて、早めの準備をおすすめします。
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