東京消防庁、心肺蘇生の中止可能に
明けましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
今年は東京オリンピック・パラリンピックの年であり、医療界においては診療報酬改定の年でもありますね。
さて、年の瀬の2019年12月から、東京消防庁が、心肺蘇生を望まない傷病者への対応について新たなルールを導入したことをご存知でしょうか。
在宅医療を受けている患者さんなどが、家族や医療・介護関係者らと「人生会議(ACP)」を繰り返し、自宅での看取りを希望されていたとしても、いざ心肺停止状態になったときに家族らが慌てて救急車を呼んでしまうと、救命を主眼とする救急隊員としては、心肺蘇生を実施して医療機関に搬送せざるを得ないというのが従来の運用でした。
ところが、その結果、患者さん本人が望んでいた人生の最期とはかけ離れてしまう……ということが起こっていました。
そこで、東京消防庁は、2019年12月16日から、一定の条件を満たした場合には、心肺蘇生を中断することができる、という新たな運用を取り入れたのです。
心肺蘇生を望まない場合の新たな運用とは
新たな運用は次のような手順になります。
救急隊が到着し、心肺停止を確認すると、まず通常どおりに心肺蘇生を実施します。
同時に、家族らに状況を確認し、もし患者さん本人が「心肺蘇生の実施を望んでいない」ことがわかったら、かかりつけ医に直接または訪問看護師などを経由して連絡します。
そして、①その患者さんが人生の最終段階にあること、②心肺蘇生の実施をたしかに望んでいないこと、③意思決定に際して想定された症状と現在の症状が合致していることを確認できたら、かかりつけ医が到着する時間を聞き、引き継げる場合に限り、かかりつけ医からの指示を受けて心肺蘇生を中止する――というのが新たな運用です。
かかりつけ医がおよそ45分以内に到着できる場合は、救急隊は待機して直接引き継ぎ、およそ12時間以内にかかりつけ医が到着できる場合には家族に引き継ぎ、救急隊は引き揚げます。
かかりつけ医との連携がカギ
この運用の対象となるのは、人生会議(ACP)が行われている成年で、心肺停止状態にある人です。未成年や心肺停止前の傷病者は対象となりません。
また、たとえ、家族から「(患者本人は)心肺蘇生の実施は希望していなかった」との情報があっても、かかりつけ医に連絡がつかない場合や、家族やかかりつけ医に引き継げない場合には、従来どおり、心肺蘇生をしながら医療機関に搬送することになります。
救急隊員もジレンマを抱えている
今回、東京消防庁がこのような運用をはじめることを発表しましたが、他の地域でも、すでに同様の運用を行っているところもあります。
救急の現場では、救急隊員・救急医としての職務を全うし、懸命に蘇生処置や救命処置を行ったにもかかわらず、あとから家族に「蘇生しなくてよかったのに……」「望んでいた最期とは違うものになってしまった」などと責められてしまうことがある、と聞きます。
救急隊員や救急医自身も、在宅看取り間近かの人の救急搬送などに関しては、「本当に必要なのか」と悩んだり、ジレンマを抱えたりすることがある、とも聞きます。
今回の新たな運用は、可能な限り患者さん本人の意思を尊重できるように、取り入れられたものです。
こうした運用は、今後さらに広がっていくのではないでしょうか。
◎東京消防庁 心肺蘇生を望まない傷病者への対応について
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